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読み終えた。

十二国記短編集丕緒の鳥読み終えてもう一回読みました。
全部が新王が登極した直後や国が傾き始めた頃の不安な時世の話でした。
そして解説の方も書いてみえましたがこの短編の主人公達はよくある現実ではあり得ない力を持ったヒーローではなく現実世界にもいそうな役割を持った人々が必死に、本当に必死になすべき事を全うする話です。だからか、こんなに胸を突かれる、でも胸にしみる話を読んだのは初めてかも知れないです。
己の役職を理解し心血を注いで必死になる、とても辛いでしょうが、でも羨ましくもあり。自分がいかに無為に時間を使っているか思い知ります。
特に胸にしみるという意味では丕緒の鳥が好きです。悲惨な話からは目を背け、耳を覆いたくなるものですがだからこそ耳をそばだててしまう、故に悲惨なことは嫌でも知ってしまう。射られ落ちてゆく鵲が民であって良いはずはないですし、どうせなら飛んでいけばいいという発想は良いなぁと、実物があるなら是非とも見たいです。
落照の獄では確かに国が傾く事はそこに住む民が無意識に感じ取り、おかしな犯罪が増える、と言うのは現実世界にも言えるのではないかと思いました。そして司法というもの、理とは、情のみで行使してはいけないもの…難しいですね。
青条の蘭は、崩れゆく国を支えんがため命を懸けて希望を繋ごうと奔走し、それがいつの間にかたくさんの民に繋がり託され、実を結ぶ、印象的な話でした。
風信は災厄にみまわれながらも戦うことが出来ないからこそ出来ることを全力でやり抜く姿が描かれ、いつか平和へ繋がる、それからの希望を感じる暖かい話でした。
全体的に自然の規律と言うんでしょうか、摂理?仕組み?も細かに描かれて、凄く引きつけられます。
きっとこれからまた何回も読むんだろうと思います。切なくでも満たされるような不思議な世界、小野先生は本当に凄いと思い知りました。